建築家と見る宮城の建築物「宮城県図書館」

コラム

こんにちは、ソライエの小野松です。

建築に携わる私たちが地元宮城の優れた建築物をクローズアップするシリーズ。

今回は、仙台市泉区の「宮城県図書館」を取り上げます。

▲宮城県図書館の外観

2021年11月10日~30日までは特別整理期間(災害復旧工事,蔵書点検)となっています。

宮城県図書館は、仙台市内で数回の移転を経て、1998年3月、現在の泉パークタウン内に160万冊の収蔵能力を持つ施設として建設されました。同エリアに、教育・研究・スポーツなどの施設が集積されており、緑豊かな敷地内に「書見の道」と呼ばれる遊歩道や東屋などが整備され散策もたのしめるようになっています。図書館北側には、隣接する宮城大学との間に遊歩道もあります。

こうした自然豊かなロケーションの中に、宇宙船を思わせるメタリックの外観の建物が「宮城県図書館」です。設計したのは、建築家の原広司氏。原氏が同じ頃に設計した京都駅と同様に、上部にミラーガラスを多用しています。3階にあるチューブ状の閲覧室は天井や壁がラウンド状になっていて、照明や窓も宇宙船や飛行機の機内を思わせる雰囲気になっています。原氏はこの作品でBCS賞を受賞しました。

「公園としての図書館」という設計思想

宮城県立図書館は、敷地全体を一つの公園と考え、「公園としての図書館」という設計思想から、館内に展示室やホールなどの文化センター的な機能として、多目的ホール、ミニシアター、地形広場、生涯学習室なども設置しています。開館後、1日の平均入館者数は旧図書館の6.5倍、1日平均個人貸出冊数は11.4倍に増加し、市民による生涯学習的な活動も盛んに実施されています。昨年夏には、館内にカフェ・レストランもオープンしたことで新たな楽しみも加わり、より魅力的なスポットとなりました。

期待感を高める天井の高いエントランス

内部はガラスやステンレス、コンクリート、大理石、タイルなどの硬質の素材が多く使われており、全体的にグレー系の色味で統一されています。撮影時、改修工事中で外側に足場が組まれていましたが、館内の利用には影響はありません。

▲細長く奥行のある開架閲覧室

すべての書架が直線状に配置され、本を探しやすくなっています。長さは200mほどあるそうです。中ほどから奥に続く天井の丸みが、直線的な中にやわらかさを与えています。こうした曲線が外観デザインにも施されたことで近未来的なカタチとなり、県図書館は「宇宙船のよう」と称されています。

▲設計時に使用されたグランドデザイン(館内に展示)

建設地はもともと手つかずの自然が残るエリアでした。そのため、計画においては「周辺の森林の伐採を極力抑え、敷地内の自然を最大限活かす設計」との方針で、地形はそのままに建物を谷間に架け、橋のような構造にしていることが模型から分かります。

▲上/ラウンジ・テラス 下/地形広場ことばのうみ

ラウンジ・テラスは館内での休憩スペース。地形広場は様々な催しものを開くスペースで、南側には遊歩道「書見の道」が続いています。館内のどこにいても緑を楽しむことができます。

▲カフェ・レストラン「PANORA kitchen of the seasons(パノラ キッチン・オブ・ザ・シーズンズ)」

宮城の旬の食材を取り入れたフレンチのカジュアルレストラン。天井までのガラス越しに四季折々の自然林を楽しみながらゆったりとした時間を過ごせます。